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​ 私の制作は、特撮ヒーローや怪獣などのおもちゃと、書き割りのような風景写真を組み合わせジオラマを作るところから始まる。私の幼少期には、特撮のキャラクターに慣れ親しんだ記憶が刻まれており、それを絵画の中に登場させるのは、幼少期の記憶や感覚を反映させるためである。また、ジオラマを作り、そこにおもちゃを置くことは、まるでおもちゃに役を与え、劇を演じさせる子供の「ごっこ遊び」である。その「ごっこ遊び」と類似した行為を制作プロセスに取り入れることで、自分の潜在的な幼少期の感覚を無意識的に表出し、リアリティを持った画面を創り出すことができる。
 
「ごっこ遊び」とは、見立てのことであり、それ自体に虚構性を含んでいる。私は絵画の中で、あらゆる方法を用い、おもちゃがおもちゃに過ぎないこと、ジオラマがジオラマに過ぎないこと、それらが虚構であることを強調することで、「ごっこ遊び」の見立てを破壊している。それは、描かれたモチーフを、世界を否定することであり、虚実の認識の問いかけであると同時に新たな絵画空間の創造でもある。

 そして、制作において重要なことは、写真を用いたフォトリアリスティックな手法により恣意性を除去し、そこに普遍性をもたらすことである。私は個人的な記憶や感覚に基づいた表現をしているが、写真という開かれたメディアを挟むことで、私の制作は外部と繋がることができるようになるのである。





​木原健志郎




 

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