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木原健志郎個展「ヒーロー」

〈ARTDYNE・東京〉2023.05.13 – 2023.06.04



この度、ARTDYNEは日本橋茅場町へのギャラリー移転におけるこけら落としの第二弾として、2023年5月13日(土)- 6月4日(日)まで、木原健志郎の初個展「ヒーロー」を開催いたします。

木原健志郎は1997年、一卵性双生児の弟として兵庫県に生まれ、2022年に尾道市立大学大学院美術研究科美術専攻を修了しました。現在、兄である木原幸志郎と共に、兵庫県の共同アトリエで制作を行っています。

木原は集めてきた画像やフィギュアからジオラマを作成し、それを写真に撮って絵画に起こすという過程を経て制作を行っています。重なった画像と画像の縁をぼかされた面とそうでない面に分けて描くことでレイヤーの存在を印象付け、懐かしさを感じさせる色遣いは見る者に自ずとその時間性を想起させます。

今回、木原は戦争画を題材としていますが、反戦や反核といった単純なメッセージを越えて、人間の業の深さ、生きることそのものの切なさに踏み込んでいます。モチーフを英雄や怪人として捉えるのではなく、ただそこに存在する「もの」として俯瞰的な目線で描くことで、善も悪も、勝利も敗北もない、混沌とした一つの世界としての表現を試みています。

今展は、120号の大作「KAMIKAZE」を始めとした新作6点から構成されます。木原健志郎の初個展をぜひご高覧くださいますよう、お願い申し上げます。

 

■アーティスト・ステートメント

私の制作は、印刷した写真と様々なフィギュアを使ってジオラマを作ることから始まる。ごっこ遊びのように作り出したジオラマには、自分の中にある暴力性が無邪気さと表裏一体となって現れる。その無邪気な暴力は、人間の根源的な暴力という意味において戦争と共鳴し、さらに戦争に対するイメージは私が幼少の頃から親しんできた特撮とも結びついた。

戦時中の自己犠牲の精神はウルトラマンにも見られるし、戦争によって生まれてしまった多くの犠牲者は科学技術の進歩がもたらした負の側面であるが、改造人間である仮面ライダーや怪人たちもまた科学の犠牲者であると言える。

今回、いくつかの作品には戦争画(第二次世界大戦中に戦意高揚を目的として描かれた絵画)を引用したものがあり、特撮と重ね合わせることで、国のために戦う兵士を英雄視していた戦時中の認識を再現しつつも、俯瞰的視点で戦争を描いた。また、特撮の持つ、正義としてのヒーローと悪としての怪人・怪獣という揺るぎない構造をあからさまに利用することで、逆説的に正義と悪について捉え直すことができるのではないかと考えた。

この展示をするに至った背景として、もちろん現在の日本や世界の情勢も大きく影響している。日本を含む世界が大きく動いているこのタイミングで、日本における戦争という過去の出来事について思いを巡らせることで、遠くにあると思っていた戦争が自分のアイデンティティーを形成してきた特撮と結びつき、自分とどこか繋がった出来事として捉えることができるのではないか。私は今回、作品を通してそれを試みている。


木原健志郎


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