- 健志郎 木原
- 4月19日
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更新日:5月4日
木原健志郎 個展「Wings」
〈ARTDYNE・東京〉2025/4/19-5/6
このたびARTDYNEでは、木原健志郎による2年ぶり2回目の個展「Wings」を開催いたします。本展では、木原が新たに展開する静物画シリーズ《リビング・フィギュア》を中心に、「生」と「死」、「虚構」と「現実」が交錯するその独自の絵画世界を紹介いたします。
ある日、制作のためにフィギュアをリペイントしていた木原の視線が、ふと卓上のサボテンに留まりました。「塗装されたサボテンは、“生きたフィギュア”になり得るのか?」――そんな問いをきっかけに、《リビング・フィギュア》シリーズは誕生します。
塗料をまとった植物や虫、肉片といったモチーフたちは、やがて朽ちゆく運命にありながらも、薄く重ねられた塗膜によってその形を保ち、「生」の痕跡をとどめようとします。ここで木原は、虚構(フィギュア)と現実(生命体)という二項のあわいにある“ズレ”を、鮮やかに浮かび上がらせます。
木原にとって「描くこと」とは、単に目の前のものを再現する行為ではありません。彼の作品は一見すると限りなく写実的ですが、鑑賞者に「これはいったい何なのだろう」と思わせる、根源的な違和感を常に残します。特筆すべきは、彼の卓越した描写力が、単なる技巧にとどまらず、作品のコンセプトと不可分に結びついている点です。塗装されたモチーフが、あまりにも緻密に、過剰なまでにリアルに描かれることで、かえって「現実とは何か」という問いが立ち現れてくるのです。こうして描かれた静物たちは、視覚的なリアリティを超えて、そこに刻まれた時間性や物質性、さらには存在そのものへの問いを私たちに投げかけてきます。
本展は、木原健志郎が一貫して取り組んできた「虚構と現実の関係性」、すなわち作られたイメージや演出された存在を通じ、現実がいかに不確かで揺らぎを含んだものであるかを可視化する、静かで力強い試みとなります。この機会にぜひご高覧賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
・アーティスト・ステートメント
普段の制作で使うためにフィギュアをリペイントしていたとき、ふと卓上のサボテンが目に留まりました。塗装されたサボテンは「生きたフィギュア」になるのだろうか?そんな考えがよぎり、何気なくサボテンを鉢ごと塗装したことが、今回の「リビング・フィギュア」シリーズの始まりでした。この作品群は、塗装されたさまざまなモチーフを描いた静物画であり、生物の持つ存在の重みを、フィギュアのように空虚で軽薄なものとして提示する試みです。
植物や肉、虫などのモチーフは、朽ちようとする一方で、表面の塗料はモチーフの形をなぞり、生の痕跡としてその形を留めようとします。その様子は、薄い塗料の皮膜を隔てて、生と死が背中合わせに存在しているかのように感じられました。
この世界の表裏である虚と実、そして生と死。私は絵を描くことによって、そういった不可視のものに形を与え、想像することができるのだろうと思います。
木原健志郎